各地のサンガ
各サンガでは、毎月の全国共通プラクティスの他、それぞれ独自のプラクティスや集会を実施しています。
詳細はそれぞれのサンガにお気軽にお問い合わせください。
みなさまのご参加をお待ちしております。
ティク・ナット・ハンの詩
あなたへの提案
Recommendation
私と約束してほしい
今日 いまここで
太陽が天頂にあり
あなたの頭上にさしかかるいま
約束してほしい
あの者たちが
渾身の憎しみと暴力で
あなたを打ち倒し
踏みつけ
虫けらのように踏みつぶしても
あなたの手足を引きちぎり
腹を引き裂いても
忘れるな 友よ
憶えておくのだ
本当の敵は人間ではない
慈悲の行いのみが あなたにふさわしい
揺るがず かぎりなく 無条件の慈悲こそが
憎しみの眼には 人に巣食う獣の心が見抜けない
きっといつか あなたは見据える
ひとりきりで 自分の中の獣を
決然とした勇気と
慈しみと迷いのない眼で
(誰も知らないそのときに)
あなたの微笑みから
一輪の花がほころぶ
そのとき
あなたを愛するすべてのものが
生と死を超えた三千世界から
あなたを見守るだろう
ひとりになった私は
ふたたび 頭を垂れつつ歩を進める
滅びぬ愛を胸にたたえて
果てのないでこぼこ道をゆく
太陽と月が
行く手をきっと照らしてくれるだろう
―――この詩を書いたのは1965年のこと。社会奉仕青年団の若者たちのためだった。戦争当時、日々いのちをかけて活動する彼らに、私は憎しみを持たずに死を覚悟することを伝えようとした。
すでに暴力によって殺された仲間もいたが、私は憎しみに負けぬよう忠告した。本当の敵は、自分自身の怒り、憎しみ、貪欲さ、狂信、他者への差別意識である。
暴力によって殺されるなら、自分を殺す相手を許すために慈悲の瞑想をすべきだ。慈悲を自覚しながら死ぬなら、人は目覚めた存在(ブッダ)の真の後継者となる。 抑圧や、 辱め、暴力によって死のうとも、死のときに許しの微笑みをたたえるならば、偉大な力を得ることだろう。
この詩を読み返したとき、突如として金剛般若経のある一節が理解できた。「クシャンティ」、忍耐についてである。「 あなたの曇りなき勇気、やさしく安らかな眼差し(ひとりでいるときでも)その微笑みからは花が咲く。あなたを愛する者たちは、幾千万の生死の世界を超えて、あなたを見つめる」
心に慈悲をたたえて死ぬ者は、私たちの道を照らす松明となる。初期の接現(インタービーイング)教団のメンバーだったナット・チーマイは焼身する前に以下の詩をテープに録音して、両親へ残した。
「"ふたたびひとりきりになり、頭を垂れて私は進む” あなたに出会い、知り、そして忘れないために。"長いでこぼこ道の上に、太陽と月は輝き続けるだろう” 人々の関係性が成熟すれば、そこには常に慈悲と許しがある。
支えを感じられるようになるためには、他者からの見守りと容認が必要だ。ブッダの眼差しをどれほど私たちは必要としていることか! 奉仕の途上には、痛みや孤独の瞬間もある。しかし、ブッダの眼差しと理解を知れば、大いなるエネルギーの波と前進への確固たる決意を感じることができる」
ウエストン修道院の修道士が、この詩に美しい曲をつけてくれた。
翻訳:島田啓介